My Hero
 ハリウッド映画「HACHI」はハチの飼い主の教授の孫が、おばあちゃんから聞いた「ハチとおじいちゃん」の話としてはじまる。場面は小学校のスピーチの授業。「My Hero」と与えられたスピーチ課題で孫の男の子はハチの話を始める。はじめは無関心なクラスメートたち。孫が話し終わる最終場面。無関心だったクラスメートたちは感動に包まれる。
 無垢の愛情を行動で表現したハチは子供たちにとってヒーローになった。

ヒーローとしてのキャラクター
 ハチ公の12年の生涯はヒーローとしてのキャラクター像の一つの典型だ。教授に愛情豊かに育てられる2年間。突然の教授の死亡。教授の姿を求めてさまようハチ公。そんなハチ公を渋谷駅界隈の人達は邪険に扱っていた(7年間の困難)。ハチ公の無垢の愛は人の心を動かしメンター(援助者)が現れる。メンターによってハチ公の話が新聞に掲載される。邪険に扱われていた秋田犬は、ハチ公として一躍ヒーローになり生存中にかかわらず銅像が建てられる(死亡するまでの3年間)。
 強いだけではヒーローにはなれない。弱さを克服するものがヒーローになれるのだ。純粋無垢の心、人を愛することができるものががヒーローになれるのだ。
 そのヒーローの物語は100年近くたった今、世界の人を感動させている。

英雄帰還の物語
 ハチ公がいまも人の心を動かすのは物語の力だ。人に共通する感動の力がある。未来にヒーローになるキャラクターは何かが欠落している。その欠落したものを埋めるために探し求める旅に出る。旅の途上での困難を克服し英雄になってもどってくる。英雄神話だ。乱暴者のスサノオノミコトは高天原を追放され、英雄になってヤマタノオロチの退治を行なう。聖杯を求めて難な冒険の旅を続けるアーサー王の英雄の物語。
 ハチ公の話がハリウッドで映画化されたのもそこにヒーローの条件、純粋無垢の力、愛情の力、そして物語の力、感動のツボがあったからだ。

 
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5月のGW渋谷、午前10時。ハチ公像の前

 笑顔で記念写真を撮っているで人達。頭にスカーフを被っているのでインドネシの女性か。公像と記念写真を撮るために外国の人が並んでいる。不思議な光景だ。


秋田犬の話題
 数日後、ロシアのフィギュアスケート選手に贈る秋田犬のニュースを見る。渋谷のハチ公像で記念真を撮る海外の人達も話題に。ハチ公も秋田犬だ。いろいろな国の人がハチ公のことについて話しいる。獣医をしている北欧の女性は、涙ぐんでいるハチ公のことを想うだけで感動でいっぱいに。

ハチ公の映画
 ハチ公像の不思議な光景が気になり2本のDVDを借りて見た。仲代達矢がハチ公の主人の教授役の「ハチ公物語」(松竹1987年)とリチャード・ギアが教授役のリメークのハリウッド映画「HACHI」(2009年)。エンディングでハチ公の写真とともに渋谷のハチ公像が映されていた。
 この映画の感動が起点になり、ハチ公の物語が世界中に広がり、ハチ公像の記念写真の光景につながったのか。

ハチの生涯
 ハチと名付けられて秋田犬は1923年(大正12年)秋田県大館市(現)に誕生。渋谷区松濤(現)の大学教授、上野英三郎のもとへ。ハチ公は渋谷駅で上野教授の送迎をすることが習慣になる。ところが飼い主の上野教授は1925年(大正14年)に急死。ハチ公との触れ合いは2年に満たなかった。上野教授が亡くなったあとハチ公は上野教授の血縁知人に引き取られ最終的に出入りの植木職人の小林の住居(現・渋谷区富ヶ谷)で育てられる。1935年(昭和10年)渋谷区で亡くなる。12年の生涯。

ハチ公と渋谷
 上野教授の死後も朝の9時と夕方の5時ころ渋谷駅の改札口前で上野教授を待つハチ公。この習慣はハチが亡くなるまで10年間続く。最初(7年間くらい)は駅員、通行人や商売人達に邪険に扱われていた。哀れに感じた日本犬保存協会の斎藤弘吉がハチの事を東京朝日新聞に寄稿。1932年(昭和7年)に「いとしや老犬物語」のタイトルで掲載。亡き主人を想うハチ公は忠犬として有になり一躍ヒーローになった。1934年(昭和9年)渋谷にハチ公像が立てられる。ハチも除幕式に出席。その像は太平洋戦争の物資供給で撤去され、現在のハチ公像は2代目だ。

生粋で純粋な愛情の物語
 95年前に生まれた秋田犬ハチ公。飼い主への純粋な愛情は物語となって、日本だけではなく世界中の人の心を動かしている。

 

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内容紹介

■物語(Narrative / Storytelling)は世界最古のコミュニケーション手法です。文字のない時代から人間は語り手の世界観(メッセージ)を聞き手に伝えるため「物語」を通じて、聞き手と接触してきました。
■メッセージの価値や意義が伝わるかどうかはそこに「物語」が流れているかどうかで決まってきます。物語があると共感や感情移入を呼び起こし説得力も増し、人を動かします。
■仕事の肝要は聞き手を説得し、動いてもらうこと。「物語」の構造や使い方を考え、学んだことを仕事で実践いたします。

プロフィール

菊池亨Toru Kikuchi
1999(平成11年)5月
有限会社トータスの代表
2006(平成18年)5月
株式会社トータスの代表

2021年4月

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